E1274
弦鳴楽器(五弦琴 トンコリ)
Harp
樺太アイヌ
Sakhalin Ainu
北海道/網走
Hokkaido/ Abashiri
l.136.4xw.12.7
木
金谷栄二郎作
サハリンや北海道の宗谷地方でみられた、アイヌ語で「トンコリ」とよばれた弦楽器である。
弦の数は五本のものが標準とされているが、三本のものや六本のものもある。
トンコリの名称は日本の琴の音の擬声語「トンコロリン」に由来するという説、満洲語の「テンゲリ」(三弦琴)から派生したとする説などがある。
本来はシャマンが所有する祭具のひとつと考えられているが、後に娯楽の一つ、あるいは教養の一つとして樺太アイヌの男女だれでもが演奏した。
トドマツやイチイなどをくりぬいて共鳴胴を作り出し、その上に板を張り、クジラ、シカの腱やイラクサの繊維などでつくった弦を張る。
胴の表面下部の弦をしばる部分には、アザラシの皮を張る。トンコリは左肩に立てかけたり、横抱きにして両手の指先ではじいて演奏された。
トンコリの中にはガラス玉などが入れられている。トンコリの各部の名称は、人体名称が付いている。中のガラス玉はトンコリの魂と見なされている。これはトンコリが生き物で、その発する音は声であるという考えからきている。そのためトンコリが使えなくなっても、そのまま捨てることはなく、お供えものをして木の根株のそばなどに置き、丁寧な送り儀礼をした。
(北方民族博物館だよりNo.52) |